【井の頭自然文化園 水生物館】『吉祥寺にある水族館』孤独の水族館 #2

「ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!」

朝9:00, アラームの音が鳴り響く。今日は休日。久しぶりの一日休みだ。

休日を有意義に過ごしたいと思い、アラームを早めの時刻に設定したものの特にするべきことがあるわけでもない。

コロナで不用意に外出するのもはばかられる。そうだ、水族館に行こう。

水族館オタクにとっては、暇さえあれば水族館を巡るというのは必要至急の行為であるのだ。

まずは本日訪問する水族館の目星を付ける。私の住まいは東京都文京区。

年パスを使わないともったいないから葛西臨海水族園にしようかしら、少し足を伸ばして油壷マリンパークやさいたま水族館に行こうかしらと思いを巡らすが、休日に家族連れでにぎわう大型水族館に行くのは、あまり気が進まない。

東京近くで人がそんなにいなそうな水族館ないかなぁ。

あれ、良さそうな水族館見つけた。

『井の頭自然文化園 水生物館』

名前からしてあまり大きくはなさそうだし、吉祥寺なら家からの距離も近い。せっかくだし、行ってみよう。

~電車に揺られて吉祥寺駅に到着~

東京にはもう、15年以上住んでいたが吉祥寺に水族館があるだなんて知らなかったなぁ。

どうやら、水族館は井の頭恩賜公園の中にあるようだ。駅から歩いて15分。水生物館の案内らしきものが見えてきた。チケット売り場でチケットを購入する。

『400円です!水生物館と動物園どちらもご入場頂けます。』

破格の安さだ。同じく都が運営する葛西臨海水族園もクオリティでいえば2000円取られても驚かないが、たったの700円である。

入り口を入る。

公園内は緑と水が調和していて、和の心を感じられる。

客層を見るとご年配の方が比較的多く見受けられる。余暇を過ごすには最適の場所だろう。

そして、いよいよお目当ての水族館にたどり着いた。

水生物館という名前だ。小さい水族館を想像していたが、私の想像よりも更に小さいぞ?

30分も持つだろうか。。

建物自体は非常に赴きのある、また落ちつきを感じられる造りである。井の頭池の端に位置するように作られているようだ。

いざ、中へ。

内装は至って、綺麗だ。壁や水槽の一部などが木でできているのが落ち着きを感じられる。また、内装が暗めなのも良い。これ程、落ち着く水族館も久しぶりだ。

さてさて、一番最初の魚は何かな。水槽の上が開放されていて覗けるようになっているぞ。

どうやら、コイやウグイの仲間のようだ。淡水魚水族館には久しく行ってなかったが、やはり、淡水魚の顔といえばコイである。

コイの体色が、けばけばした色をしておらず、却って好感度が上がる。

続いては、大きな水槽だ。

おそらく、この水族館で一番の大水槽だろう。大水槽といえばその水族館が根差す地域の代表的な水塊を表現したものが多い。

なるほど、ここは井の頭池を表現しているのだな。よーく見ると、流木やコケ、岩なども忠実に再現されている。落ち着くなぁ。日本庭園を巡って楽しむ老人の心持ちも似たようなものであろうか。

カイツブリが水槽を左右にせわしなく動き回っている様が目立つ。恐らく、彼(彼女)がこの水族館で一番のスターであろう。鳥類がスターの水族館とはこれまた面白い。

他には長崎ペンギン水族館くらいのものだろう。

『カイツブリの餌やりタイム』なんてのもあるらしい。

最初に30分も居られるかなと思ったが、この大水槽の前でコーヒー片手に木のベンチに腰掛けカイツブリを観察していれば、あっという間だろう。

有意義な休日だ。

大水槽から先の通路へ歩みを進める。

照明の度合いと木の手すりと水槽の雰囲気が絶妙にマッチしているなぁ。

カエルにタガメにゲンゴロウ。かつては日本の淡水域に普通に見られた生き物たちだ。

今では、希少生物となってしまった。

続いては、アマガエルの展示だ。

カエルは何より、生息環境を忠実に再現している点に心を打たれ、水族館が我々に提供してくれる価値とは何かを考えさせられる。

水族館プロデューサーの中村元氏が『顧客は水族館に水塊を見に来ている』と仰っていた。水塊とは、圧倒されるような水の塊のことだ。

我々、消費者はこの水槽から川という水塊を感じることが出来るのだ。

多くの水族館で私も水塊を感じ、水族館を訪れたときに感じる興奮度もその水塊の大きさと比例することが多かったように思う。

この展示の岩から滴り落ちる水や、川の流れを再現している細部への拘りがこの感覚を増強させる。

この展示は昔・今・未来の3つの時点での井の頭公園を再現している。

井の頭池が昔から未来にかけてどのように変化していくのは来館してからのお楽しみだ。自分の目で確かめてみて欲しい。

しかし、随所に小さな水族館ならではの工夫を感じるなぁ。

これは、オオサンショウウオの展示らしい。どこにオオサンショウウオがいるのだろう?

正解はこちらだ。

過度に生き物を分かりやすく展示するのではなく、自然に溶け込ませて展示する手法は面白いし本来の生き物展示の在り方だ。

近年は、水族館のテーマパーク化やインスタ映えに代表されるような映え・写真ブームによってカラフルでわかりやすい展示が増えている。

しかし、自然そのものに生き物を溶け込ませ、ありのままに展示することこそが本来の意味での水族教育。生き物を探す喜び、見つけたときの喜びがあるというものだ。

とはいえ、見つけるのになかなかてまどった笑

通路を通って入口の反対側に出るとベランダのようなものがある。何だろうか。

どうやら井の頭池を一望できるスポットのようだ。これまで見てきた生き物たちがこの水面下で生息していると思うとわくわくする。

入り口に向け、これまで来たのとは反対側の通路を引き返す。

メダカの展示だ。藻が後ろからライトアップされ絶妙にインスタ映えしている。

良い写真を撮ろうと、カメラを持つ手に力が入る。さっきまで、インスタ映えを斜めに見ていた人間はどこに行ったのだろうか笑

所詮、人間は流行には逆らえない。

インスタ映えする展示をすることは人々の生き物への興味関心をそそるので必ずしも悪いことではないのだ。

通路を抜けて入り口へ戻ると、もう一周館内をぐるっと周り、建物を出る。

最後は井の頭池のほとりでコーヒーを飲む。

普段は人混みを掻き分け、水族館を巡るため、まだまだ体力が有り余っている。

この休日の過ごし方をするには、私はまだまだ若すぎたようだ。

しかし、東京でもこんなに心静まる場所があることを知れたのは良かった。値段も安いしね。

さてさて、家に帰って、課題でもやろうか。

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孤独の水族館シリーズはこちらから。

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