日本で イルカショー は禁止になるか?

これまでは、水族館の未来の在り方について考えてきた。今回はテーマを絞って将来 日本で イルカショー が禁止になるかどうかを考えていきたい。

欧米では イルカショー 廃止の流れが加速

水族館ブログ イルカショー

皆さんは昨今欧米で イルカショー 廃止の流れが加速しているのをご存じだろうか?そもそもスイスやイギリスなどではイルカの飼育施設自体が存在しない。

欧米では、イルカを飼育することが自体が倫理に反すること、ましてやショーを行うことなでは虐待に等しいという考え方が主流になりつつあるのだろう。

 なぜ イルカショー がなくなっている?

・イルカの捕獲方法が残酷である

水族館ブログ イルカショー

 イルカショーが廃止されている理由としては、倫理的な問題が大きい。まずは、イルカの漁法に関して、太地町の追い込み漁が残酷と捉えられていることが挙げられる。追い込み漁では、イルカを入り江に追い込み、浅瀬でほとんどを、食肉用にナイフで解体する。この様子が「コーヴ」という映画にまとめられて公開され、世界的な注目を集めた。
※和歌山県の見解はこちら

ここで食肉用に使われなかったイルカが、水族館に売られるわけだ。日本の水族館のほとんどが、和歌山県太地町の追い込み漁で捕獲されたイルカを購入し展示用イルカをまかなっている。

しかし、2004年に「世界動物園水族館協会(WAZA)」が台湾での総会で、「追い込み漁により捕獲されたイルカを受け入れてはならない」という決議を採択した。この決議に対して、公益社団法人「日本動物園水族館協会(JAZA)」は抗議したが、受け入れられず2015年、会員施設の追い込み漁からのイルカ導入を禁止した。WAZAの会員資格を失うことで海外から希少な動物を手に入れられなくなる事態を避けるためだ。

この事態に対応して、追い込み漁による入手も必要な手段の一つと考える水族館が集まり2016年に日本鯨類研究協議会(JACRE)が設立された。

しかし、世界的には追い込み漁を禁止している国が多数で、イルカの展示が厳しくなっている水族館が増えているのが現状である。

・水族館でのイルカの繁殖の成功率が低い

水族館での繁殖に関しても出産後の1年後生存率はわずか20%程度と技術的に難しいことが挙げられる。

また、出産の際にオスとメスを水槽を入れ替えマッチングさせるがそのときの移動などでかかる身体的負担も問題視されているという。

・捕鯨を神聖視する欧米の文化

そして、何といっても一番大きなところは文化の違いだろう。捕鯨問題等で欧米と日本が対立しているように、この問題の根幹にはクジラやイルカを含む鯨類への両国民の認識の違いが大きく影響を及ぼしているように思う。ここに足を突っ込むとややこしいことになるので、これ以上深入りはしない。
※捕鯨問題についてはこちらの記事で詳しく解説している:【2024年最新版】 捕鯨問題 とは?

 日本で イルカショー は存続するのか?

答えは、あと10年はイエスだ。現状、日本国内でイルカショーの存在を問題視する声はメジャーではないし、日本政府は捕鯨問題に対しても欧米に対して強気であるので、少なくともここ10年は欧米のようにイルカショーが廃止される流れが生じる可能性は考えにくい。

一方で、今後の日本政府の捕鯨問題に対するスタンスが変わる可能性や、世界的に追い込み漁をしている国の水族館へ生き物を輸出することを禁止する動きなどが出た場合、イルカショーの存続問題に関わる可能性がある。

 日本の イルカショー の進化

イルカショーが今後10年続くと仮定したうえでイルカショーがどのように進化するのか考えていきたい。

水族館もイルカショーをあくまでビジネスの売り上げを上げるための手段として行っているわけだから、ビジネスの視点からイルカショーを見たときに経営で重要な三大資源である「ヒト・モノ・カネ」に絞って考察していきたい。

水族館ブログ イルカショー の未来

・ヒトの進化

水族館ブログ イルカショー の未来

 従来のイルカショーの登場人物はイルカのトレーナーとイルカで構成されている。

トレーナーに絞ってみると、イルカショーのトレーナーがアイドル化するという現象が起こるのではないだろうか。ときどき、各所の水族館で人気のイルカショートレーナーがいるように、SNSで情報が流通しやすい現在ではアイドルトレーナーといったものも誕生しやすいのではないだろうか。こういうトレーナーを抱えることで水族館は熱狂的なリピーターを増やすことが出来る。

また、イルカショーパフォーマーのグループやユニットが結成されても驚きではない。

 イルカに関しては技術自体の進歩はすぐには見られないであろうが、バーチャル映像とコラボしたイルカのパフォーマンスなども今後出てきそうである。

また、固定費削減のために、トレーナーとイルカがVR技術でバーチャル上に再現されたイルカショーなども登場するかもしれない。

・モノの進化

 多くの人が日本で最先端を行くイルカショーはどこかと問われたら、「マクセルアクアパーク品川」のイルカショーを挙げるだろう。

水族館ブログ マクセルアクアパーク品川

アクアパーク品川ではプロジェクションマッピングを用いて、360℃に星を再現したり、夏にはデジタル花火を打ち上げるなどしている。また、夜の部では会場全体の照明を落として、薄暗いロマンチックな世界観を演出することでターゲットを従来の子連れの家族から、カップルなど大人向けにも拡張することが出来る。

技術的なところでは、スモークマシンを導入することで各種照明機材の光源やレーザーの光のラインを見えやすくし、照明効果をより高めている。

昨今はインスタグラムやTwitterといったSNSで噂が拡散することが多いため、カメラやビデオへ華やかにかつ綺麗に映ることは非常に大切だ。

更にプロジェクションマッピングの演出では、季節毎、時間帯別にテーマを変更することで、飽きさせずにリピート需要を生むことができる。スタバが季節毎にフラペチーノを変えて、足繁く通わせているのと同じ手法だ。

更に、天井から水を降らせる演出であるウォーターカーテンも斬新な発想である。プール中央に降り注ぐ水によって作られるウォーターカーテンへの光の当て方を変えることで、形を変えて美しく演出している。

また、アクアパーク品川では音楽を演出にあわせて変えたり、『12.1chデジタルマトリックスサウンド』の音響システムを使うことで臨場感を出している。

このように大規模な照明・音響設備、プロジェクションマッピング技術を用いることでイルカショーのクオリティが格段に引きあがりターゲット層が子供連れからカップルへと拡大しており、今後もさらに設備面で進化を続けるものと考えられる。視覚聴覚に限らず、嗅覚や知覚に関わる体験をさせるような仕組みも生まれてくるのではないだろうか。(席が揺れる等)

・カネの進化

水族館ブログ 鴨川シーワールド

 前述したように、イルカショーの照明設備や音響設備が大型化すればするほどイルカショーにかかる資金も大きくなる。

この資金を捻出するためにイルカショーだけで別料金を取るような業態も生まれてくるのではなかろうか?また、イルカショースタジアムに広告の掲載やプログラムへの企業の協賛も増えてきそうである。(ディズニーランドのように)

 まとめ

いかがだったろうか?ざっくりとまとめると、VR技術照明・音響・プロジェクションマッピング機材の進化でより表現の華やかなショーが展開されることが想像されうる。また、機材や技術の進化によりイルカショーに要するコストも増加することが考えられ、そのコスト増を補うためイルカショー自体で別料金を取る業態や、広告の協賛拡大などが起こる可能性が考えられるだろう。

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