東京最大の水族館が誕生 ~ 葛西臨海水族園 のリニューアルから読み解く水族館の未来の形~

皆さんは水族館2020年問題という言葉をご存じだろうか?

1990年代のバブルの頃に作られた、水族館や動物園といった多くの施設が改修目安時期の30年を迎えており、2020年代に一斉に改修時期となり、特に公立水族館の財政を逼迫する恐れがあるという問題のことだ。

1989年オープンの葛西臨海水族園もこの2020年問題により、リニューアルに踏み切った水族館の一つだ。

葛西臨海水族園は東京都により運営されている公立の水族館だ。

また、その前身は上野動物園内に作られた日本初の水族館である観魚室(うをのぞき)であるとされ、歴史もある水族館だ。(参照:水族館の歴史)

この東京を代表する水族館の再建計画が発表されたため、今回は東京都が力を入れて改修に取り組むそのリニューアル計画にスポットを当てて、水族館の未来の姿を探っていきたい。

① 世界唯一のマグロの群泳水槽の進化

参照: 葛西臨海水族園 の更新に向けた事業計画
参照:葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画

葛西臨海水族園の目玉は何といってもマグロの群泳水槽

マグロというのは、常に泳ぎ続けなければならない生き物で飼育が難しいため、世界でもこれだけの規模でマグロが泳いでいるのを観察できるのはここだけだ。

今回のリニューアルでは、現在2,200tのこの水槽の規模が3,000tへ大型化する。

大型化することのメリットとして、マグロの産卵を安定化することができる。

葛西臨海水族園は世界で初めて、陸上水槽でのクロマグロの産卵を成功させた水族館でもあり、これが安定化できるようになれば、養殖等水産業にも重要な知見が水族館で蓄積される可能性もある。

また、映像やICTを駆使し、水中にいるような演出を行うということで、来場者としても非日常を感じることができ、これまでは公立であるということもあり、水槽外の演出は控えめであった当館の展示がグレードアップすることが期待できる。

これまで、水族館というのはあくまで博物施設で過度に水槽外での演出を為すべきではないという思想が強かったが、公立の水族館といえども水槽外の演出=非日常的な体験に力を入れなければ、エンターテイメント化を加速する民営の都市型水族館やレジャー施設にどんどん顧客を奪われてしまう。

もちろん、生き物を知り理解してもらうのが、公立の水族館の使命ではあるが、そのためにはより多くの人に足を運んでもらえるような状態を維持することが必須なのだ。

② サンゴ礁大水槽の新設

 参照: 葛西臨海水族園 の更新に向けた事業計画
参照:葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画

上から周囲を回って見れるようなサンゴ礁の大水槽が誕生する。

葛西臨海水族園は、魚だけでなく、周囲の岩や海藻といった周辺環境も忠実に再現する展示が魅力の一つだ。

サンゴ礁を再現した大水槽が誕生し、ウミガメやナポレオンフィッシュがリアルな環境を泳ぐ姿を見ることができれば、目玉ポイントの一つになることは間違いないだろう。

また、展示イメージにあるように水槽の周囲をぐるっと回って展示を見ることが出来るようになれば、様々な角度から水槽内部を観察ことが出来いろいろな発見があることだろう。

海遊館等が取り入れているこの手法による展示が増えるのは面白い。

展示テーマの整理

参照: 葛西臨海水族園 の更新に向けた事業計画
参照:葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画

これまで、葛西臨海水族園はエリアを生物が生息する国・地域に区切って、「グレートバリアリーフ」「紅海」等の展示エリアを区切って展示を行ってきた。

この展示手法を生物が生息する生態系に応じて分割して飼育する構成に変わるのだ。

見る側としては、エリアごとに水槽が分かれていると世界の海を旅している気分となって、それはそれで面白かった。

しかし、生態系ごとに大枠で区切ってもらえるとより自然に適応する生き物の特徴にフォーカスして展示を巡ることができるので、これはこれで整理がされてよい。

まとめ

葛西臨海水族園は2022年12月~2027年9月に新水族園を設計・建設し、開業準備を経て2028年3月末に開業する計画だ。

特にこれまでは規模は大きいが、公立水族館であるゆえの演出の地味さが目立ったがICTを駆使した演出の進化に期待だ。

今後の時代は公立水族館でも演出に力を入れて入場料に見合う非日常的な体験を提供しなければ、民営の水族館にどんどん顧客を取られて行ってしまう。

葛西臨海水族園に限らず、日本全国の民営水族館が2020年問題による改修を経て進化していって欲しい。

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