【かわさき水族館】『最強の淡水水族館』孤独の水族館#3

『カタカタ…カタカタ…』

いつものように私は研究室でキーボードを叩く。

魚の研究者といえば、海や川に繰り出し野外調査を行っているイメージを持たれるかもしれない。

しかし、実際は小さな実験魚の水槽を除いては日々の生活で自然に触れ合うことはない。殺風景な研究室でパソコンでデータと格闘するのが日常だ。

そんな白黒の日々を彩ってくれるのが、都会にいながら、水塊を感じさせてくれる水族館だ。

今日は2020/7/16木曜日。明日の午前中は久々の休みだ。水族館に行こう。

私は、あたかも論文を探しているように振る舞い明日のターゲットを決定する。

『かわさき水族館、明日OPEN!』

ひと際、目を引く文言が飛び込んできた。明日、川崎駅に水族館がOPENするらしい。噂には聞いていたが、こんな重大情報を見落としているなんて、私はマニア失格だ。

明日のターゲットが決まった。

~翌日~

朝9:30、川崎駅に到着する。水族館は川崎ルフロンという建物の10Fにあるらしい。Googleマップを頼りに川崎ルフロンにたどり着く。

ビルの高層階に位置する水族館といえば、サンシャイン水族館が印象的だ。配置できる水槽の水量に制限があるため、大型生物の展示は難しい。その分、企画や装飾を華やかにすることでお客を楽しませている印象だ。

建物の前はOPEN記念イベントでお祭り騒ぎだ。

あわよくば、一番乗りなんて思いで来たけれどもう列が出来ている。30人は並んでいるだろうか。

前方にはなんとレジャーシートを引いている人まで見えるではないか。素晴らしい水族館根性だ。

列に並ぶ。開館の時が近づくに連れ少しずつ、列が動く。遂にルフロン建物内に入っていく。

看板が見える。緑がモチーフの水族館らしい。外来種が増えた多摩川が『タマゾン川』なんて揶揄されたこともあったが、それを逆手にとっているのだろうか。

淡水魚をテーマにした水族館であると聞いているが、淡水魚×華やかな水族館というのはこれまでに例がないかもしれない。

エレベーターで10Fに上がる。いよいよ入口が見えてきた。水族館の開館の瞬間に立ち会うのは初めてだ。マスコミが多く詰めかけていて騒がしい。

神々しい瞬間だ。

開館と同時にいざ入館。結局、私は15番目くらいだ。

内装は非常に綺麗で現代的。プロジェクションマッピングなんかも使われている。

【多摩川ゾーン】

最初の展示室に入る。おぉ!

暗めの照明と、水槽の外にまで表現されている木や岩といった自然が私を一気に多摩川の世界観へと引き込む。

また、水槽の後ろにある大きなスクリーンが遠景を表現し、展示室の空間を拡張させる。

そして、何より部屋中に響き渡る鳥の鳴き声や虫の騒めきが世界観をより一層際立たせる。

最初の展示室にして私は完全にこの水族館の虜にされてしまった。

そして、何といってもこの水族館最大の特長が展示生物の説明が現実世界に置かれていないことだ。

水槽前にあるQRコードをスマホで読み取ると、サイトに繋がり生物の詳しい説明を閲覧できる。

そして、上の写真のモニターは各展示ゾーンに一つずつ備え付けてある生物名をAIが自動判別するモニターらしい。

噂には聞いていたが、すごい。高速で泳ぐ魚たちを瞬時に判別している。これぞ、近未来型水族館。

【アジア・オセアニアゾーン】

ソウギョやアユといった多摩川の生き物を観察し、次なるゾーンへ向かう。

アジア・オセアニアゾーンだ。早速登場してきたのがカワセミっぽい鳥だ。飼育員さんが話している。

『今から餌をやるので、よろしければ見ていってください!』

飼育員さんは展示室の中に入っていく。手に持っているのはネズミだろうか。切られているらしく、少しグロテスクだがこれも自然の摂理。

飼育員さんが続ける。『昼と夜で展示している生物が異なるので、夜にも是非足を運んでみてください!』

リピートさせるための営業文句であることを腹ではわかっているが、どうせ私はいずれ足を運ぶに違いない。

【アフリカゾーン】

ゾーンを進む。おや?

何か一気にアフリカっぽくなってきた。地面には火山の割れ目のような装飾が展示の輪郭を縁取る赤いライトが灼熱の大地を連想させる。

アフリカのシクリッドの仲間たちだ。

最近読んだ本でアフリカのタンガニーカ湖の魚たちは長い間環境変化の影響を受けずに進化を続けてきたため、種のバラエティが非常に豊富だということを知った。

色とりどりの魚たちは私にそれを感覚的に理解させる。

これはアフリカハイギョ。大きい。

大きなナマズだ。木の枝のようなひげを持っている。水中で遭遇したらぎょっとしそう。

【南アメリカゾーン】

アフリカの生き物を楽しみ、9Fへと下る。続いてのゾーンは南アメリカゾーンだ。

これはすごい。最初のゾーンと同じく、背景のスクリーンが空間を拡張させている。しかも、水平線があたかも続いているかのように見えるのが素敵だ。

高層階に位置し、水量を制限されている水族館ならではの工夫だろう。

続いて足を運ぶのは、私がひそかに楽しみにしていた『パノラマスクリーンゾーン』だ。CGでアマゾンカワイルカの水槽を再現しているという。

その再現度に注目だ。

結果はというと、少しがっかりした。アマゾンカワイルカは確かにいるんだが、少し動きがカクカク…。しかし、絶滅の危機に瀕している生き物をバーチャル上であれ観察できたことには感謝せねばならない。

世界各国のゾーンを抜け、いよいよ展示はラストスパート。

【アマゾンゾーン】

アマゾンゾーンだ。アマゾンの密林と大河を表現した展示室の中にトンネルのような通路が作ってあり、そこを人が通っていく仕組みだ。

アマゾンの豊かな自然が忠実に再現されている。

そして、真打ち登場。この水族館の顔、ピラルクだ。通常の水族館で見る個体と比べ少し、小柄だがこの距離感で見られるのは素晴らしい。

報道陣が来館者にインタビューしている。

感想にそば耳をたてていると、概ね都会の水族館なので展示は小ぶりなものかと思っていたが想像以上でまたリピートしたいというものだった。

確かにこれはリピートする価値がある。昼と夜で生き物が入れ替わるという設定が良い。

アマゾンゾーンを抜け、観覧を終える。

朝から並び続けて少し疲れたが感動的な瞬間に立ち会うことができた。めでたしめでたし。

次は夜の姿を観に行こう。また、一つ楽しみが一つ増える。

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孤独の水族館シリーズはこちらから。

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