【プロ野球】 DeNAベイスターズ のマーケティング戦略
12球団マーケティング分析シリーズ第一弾は DeNAベイスターズ 。2012年のDeNAの球団買収後、特にマーケティングに力を入れて実施しているように感じる。
実際、観客動員数の増加は著しく、2019年には過去最多を達成した。今回はその理由に迫りたい。
また、マーケティングを分析する手法として今回は4P分析を使用した。
4P分析の結果は以下のようになる。

目次
コンセプトは『スポーツエンターテイメント×地域密着』
現在、野球の競技人口は減少傾向であり、この情報だけを見るとプロ野球の観客動員数は減っていくことが予想されるだろう。
しかし、野球観戦の楽しみ方を"スポーツのみを楽しむ"から、"スポーツ+球場で行われるエンターテイメントを楽しむ"=スポーツエンターテイメントと定義することでより多くの客層を取り込むことが可能になるわけだ。
また、地域密着をより強固にすることで頻繁に横浜スタジアムに足を運ぶ熱狂的なリピーターを増やすことができる。
ここからより詳細にDeNAのマーケティング戦略を見ていく。
ビジネスドライバーを観客数と定義
観客数を伸ばせば広告やグッズ・飲食による利益も増える

野球観戦の売り上げは①チケット収入②放映権販売③選手のユニフォームや球場内への広告④グッズや飲食による売り上げ――の4つに大別できる。(参考文献)
したがって、観客数を伸ばせば各種の売り上げも伸びてくるというビジネスモデルになっている。
例えば、DeNAベイスターズ初年度の2012年には、ゴールデンウィークの集客作戦として「全額返金!?アツいぜ!チケット」企画を実施した。この企画は5月1日から6日までの試合に300の特別席を設け、ベイスターズが試合に負けた場合は、チケット代を全額キャッシュバックする。勝った場合も半額だという。
この企画は赤字を出してでも、ともかく一度球場に足を運んでもらって野球観戦の楽しさを認識してもらい観客数増加につなげようという意図が感じられる。
データに基づくマーケティング
ターゲットはアクティブサラリーマン層
DeNAが球団を買収した当初、球団には来場者の属性に対する情報(年齢・性別等)が蓄積してなかったという。
そのため、多くのアンケートなどでデータを蓄積し、それを分析して、全社での戦略ターゲットを明確化。
結果、ターゲットとしたのが「アクティブサラリーマン層」であった。アクティブサラリーマン層とは、具体的には「職場は球場に近く、仕事の後に、開始から少し遅れて球場入りし、ビールを飲みつつ雰囲気を楽しみ、勝敗以外の盛り上がりや感動を重視する」と定義されている。
特にこの中でも重要な要素は、勝敗以外の盛り上がりや感動を重視するという点だ。ここから、スポーツエンターテイメントというコンセプトが生まれたのではないだろうか。
ドローンや花火を使ったエンターテイメントショー
ベイスターズは昨年、試合終了後に、『STAR NIGHT X TIME TRAVEL』と題して、グラウンド全面のプロジェクションマッピング X ビジョン X ドローンの映像を掛け合わせたエンターテインメントショーを実施した。
2020年には弦楽四重奏の生演奏が行われ、バックスクリーン上の電光掲示板には宇宙をイメージした迫力あるCG映像が流され、レーザー照射や花火で球場全体を彩るイベントも実施された。
このように野球観戦という体験を試合を見るだけでなく、こういったショーも合わせた経験にすることで多様な客層を取り込む狙いが感じられる。
大規模な地域密着施策
コミュニティボールパーク化構想

DeNAは球団保有後、ベイスターズファンはもちろん、野球を知らない人でも気軽にスタジアムに足を運んでもらい、食事やおしゃべりを楽しんだりできる「憩いの空間」を創生するという目標=コミュニティボールパーク化構想を掲げている。
DeNAベイスターズは横浜スタジアムの運営会社のTOB(株式公開買い付け)を2016年に成立させたことで、チームカラーを反映させた球場改装や飲食スペースの充実など球場運営に関われる範囲が一気に拡大した。
これまで、横浜スタジアムを含む横浜公園一帯の改修・整備を段階的に進めてきた。例えば、スタジアムの外観や座席のカラーをベイスターズブルーに統一したり、ドリームゲートやグラウンドでの早朝キャッチボールなど市民と選手・スタジアムとの距離が近づく企画を積極的に打ち出してきた。
また、2020年からは横浜スタジアム外周を1周する高さ6mの「Yデッキ」のリニューアルに合わせ、新たに「Yデッキ」内の外野スタンド間から横浜スタジアムを見渡せるフォトスポットエリア「DREAM GATE STAND」が誕生。「スタンド」の間から横浜スタジアムを見渡せるということでより選手がプレーするスタジアム上という非日常空間が近く感じられるような仕掛けだ。
球場外で無料パブリックビューイング
「ハマスタBAYビアガーデン」はキッチンカーによるグルメや、ビールやソフトドリンクなどを飲みながら、ベイスターズの試合中継を大型ビジョンで見ることができる、入場無料のエリアだ。
球場外にこういったエリアを設けることで、より多くの人にベイスターズを身近なものに感じさせ、今度はチケットを買って試合観に行こうと次の収益につなげられるわけだ。
また、ホテル横浜ガーデンにてビュッフェ形式の食事と、飲み物を片手にベイスターズの試合のライブビューイングを視聴できるというイベントも実施している。
こういった無料のライブビューイングイベントを球場付近の各所で実施することで地域に多くのファンを作ることができるわけだ。こういったファンが熱狂的なリピーターとなり、球団の売り上げを支える。
横浜市を巻き込んだ地域密着施策
また、球団をより身近に感じてもらうために、毎年監督や選手が横浜市内の小学校を訪問するイベントを実施するとともに、鉄道会社と連携して、最寄りの駅をベースターズ仕様に改造しより多くの横浜市民に横浜=ベイスターズという印象を植え付けている。
他にも市長と協力し、マンホールなどの公共財にベイスターズのロゴマークをデザインするなど、地方自治体も巻き込んだ規模感で地域密着施策を実現できている。
こういった大規模な施策の成果は10年、20年経ってより明確に成果として表れてくるだろう。
アフターコロナの立て直しに期待
ベイスターズは2019年、球団創設以来最多の228万人を動員した。しかしコロナ禍に入った2020年は46万人、2021年は72.6万人に激減してしまった。
ここ二年、コロナで開催が見送られていた「ハマスタBAYビアガーデン」も復活予定だ。規制が取っ払われ、幅広いマーケティング手法が実施可能であるため、これからもDeNAベイスターズに期待だ。進化する横浜スタジアムに皆さんも一度足を運んだみてはいかがだろうか?(チケットはこちら)