水族館業界を劇的に変えた男:中村元

これまで、水族館に関するニュースや記事をお伝えしてきたが、今回は水族館業界を劇的に変えた一人の男を紹介したい。

水族館プロデューサーの中村元(なかむらはじめ)氏だ。

中村元氏の功績を挙げればきりがないが、1980年代にラッコブームを巻き起こしたり、低迷していたサンシャイン水族館をリニューアルして再生したりと水族館に関する大仕事をたくさんやり遂げている。

この記事では、これまでの中村元氏の歩みと彼がどのように日本の水族館業界を変えてきたのか?にフォーカスして解説していきたい。

 地元の鳥羽水族館に入社し、日本初の広報担当に

中村氏は三重県松阪市で生を授かった。

成城大学経済学部経営学科に入学するとマーケティングを学ぶ。

実はこのとき、海の生き物や水族館には全く興味がなかったという。

大学卒業後、株式会社鳥羽水族館に入社。

創設者で初代館長中村幸昭氏の影響を受け頭角を現し、鳥羽水族館のリニューアルに成功した。

中村氏は入社後、日本初の広報担当として、飼育する生物の映像をテレビ番組の「わくわく動物ランド」をはじめ、メディアに提供することで水族館の魅力を全国に発信していった。

今でこそ、水族館=レジャー施設というイメージが強いが、当時は教育施設といった意味合いが強く過度な宣伝や装飾を行わない水族館が多かったので、このような試みは珍しかった。

このような試みが実を結んだのが1980年代のラッコブームだ。

当時、水族館とは「魚の見世物」というイメージが強く、今でこそ水族館の人気者であるイルカたちの知名度も低かったという。

これでは、集客の面で動物園に勝つのは難しい。

そこで中村氏はアメリカからラッコを連れてきて、メディアを使って拡散したところ人気に火がつきラッコブームが到来

一時は全国で120頭以上のラッコが飼育されるまでとなった。

これを機に来場者が急増し、ようやく水族館も観光スポットとして認知されるようになったという。

このあと、中村氏は鳥羽水族館を退職。

 サンシャイン水族館のリニューアルを手掛ける

新江ノ島水族館の移設監修に関わった後、サンシャイン水族館のリニューアルプロジェクトに携わる。

サンシャイン水族館はビルの屋上にあり、屋根がなく気温の変化も激しく水族館としては大きな弱点を抱えていた。

そこで中村氏は「天空のオアシス」というキャッチコピーをかかげ、屋上を緑化した。

更にはアシカを頭上の円型水槽で泳がせて下から見えるようにしたり、ペンギンを頭上で泳がせてまるで飛んでいるかのように見せたりと屋上という環境を上手く利用して天空の開放感を演出した。

また、サンシャイン水族館は高層階に位置するため水槽の水量に制限があり大型水槽の設置が難しかった。

そこで水槽を広く見せる工夫を行った。

具体的には、水槽の地面を傾斜にし奥行き感を出したり、手前の照明を奥より明るくして広く見せているのだ。

 水塊という考え方

中村氏の水族館プロデュースの根幹にある考え方は【水塊】という考え方だ。

中村氏は水塊を下記のように定義している。

水塊とは、海や川の立体的な奥行や、浮遊感、清涼感、躍動感など水中世界をそのまま水の塊にして水族館に持ってきた、リアル感あふれる展示のこと

巨大な水の塊を目にすることで人は非日常感をおぼえ、まるで海にいるかの感覚を覚え心動かされるのだ。

 山の水族館のリニューアルに携わる

大都会のサンシャイン水族館のリニューアルを手掛けた後は、北海道の大自然に囲まれた山の水族館のリニューアルに携わる。

リニューアル後は北の大地の水族館という別名もついている。

当時、この水族館は非常に山奥にあり、大雪で冬にはアクセスも困難な場所に位置していた。

そのため、来館者の少なさと施設の老朽化に苦しんでいたのだ。

そこで立ち上がったのが、我らが中村元氏。ボランティアでプロデュースに携わった。

中村元氏は

・世界初の滝つぼ水槽

・温泉水を利用したイトウの巨大水槽

・冬になると凍る水槽

など北の大地の水族館でしかできないような素晴らしい展示を実現。

こうして、中村元氏は低予算で北の大地の水族館を復活させたのだ。

 まとめ

この後も、中村氏は広島のマリホ水族館のリニューアルに携わったり、水族館以外の観光レジャー施設のリニューアルに関わったりと活躍の場を広げている。

また、中村氏の鳥羽水族館・サンシャイン水族館・北の大地の水族館のリニューアルに関しては下記の本で詳しく解説されているので是非読んでみて頂きたい。

私が人生の中で最も読んでよかったと思っている本だ。

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