マグロとサーモンの切り身の赤色の違いには理由がある

寿司ネタの定番マグロとサーモン。皆さんは同じ赤は赤でもマグロの切り身が赤い理由と、サーモンの切り身が赤いのは違う理由はご存じだろうか?

今日はその理由を簡単に説明したい。

 マグロは赤身魚で、サーモンは白身魚

そもそもマグロは赤身魚にサーモンは白身魚に分類される。

一般に人間の体でも赤い筋肉は持続的に動くため長距離走などに使われ、白い筋肉は瞬発的に大きな力を発揮するために短距離に使われることが多い筋肉だ。(参考記事:遅筋と速筋の違い)

魚でもマグロなど大洋を長く泳ぎ続ける魚は赤身で、ヒラメなど底でじっとしていて瞬発的に動いて獲物を捕らえる生き物は白身のイメージが強いだろう。

以下が赤身魚と白身魚の分類だ。

赤身魚:マグロ、カツオ、サバ、ブリ

白身魚:サーモン、タイ、ヒラメ

 マグロの赤はミオグロビン由来

マグロの赤は筋肉色素タンパク質のミオグロビンという成分によるものだ。

水産学の観点からは「赤身魚」は、ヘモグロビンやミオグロビン等の色素タンパク質が100gあたり10mg以上の魚を指し、それ未満はすべて白身魚として扱われる。

このミオグロビンには血液中で酸素を運ぶヘモグロビンから酸素を受け取って、筋肉中に留めておく性質がある。

このように筋肉中に酸素を取っておくタンパク質が多いことからマグロは長い時間泳ぎ続けられる。

マグロは泳ぎを止めると呼吸が出来なくなり死んでしまう生き物としても知られている。

したがって、長時間働く筋肉に酸素を留めるミオグロビンは非常に大切なのだ。

他にもクジラ、アザラシ、イルカなど水中に潜る哺乳類は大量の酸素を貯蔵しなければならないため、これらの筋肉には特にミオグロビンは豊富に含まれている。

クジラの刺し身を食べたことがある人ならわかるかもしれないが、赤を超えて少しどす黒い色をしている。それだけミオグロビンが豊富なのだ。

 サーモンの赤はアスタキサンチン

サーモンの赤色はマグロと違って餌由来の色だ。海でアスタキサンチンという赤色の色素を含むエビやカニなどの甲殻類を食べることで筋肉に赤い色素が蓄積するのだ。

サーモンは川で生まれ、海へ下り、また故郷の川へ戻って産卵する習性があるが、海に下ってからアスタキサンチンを含む餌を食べるようになる。

したがって、海に下る前のサケやアスタキサンチンを含む餌を与えず淡水のみで育てたサケの身は白いのだ。

このアスタキサンチンは美容成分としても注目されており、強い抗酸化作用がある。

アスタキサンチンの抗酸化作用は、ビタミンCの6000倍と言われており、肌の老化の原因となる、活性酸素を除去する働きを持つ。

富士フィルムの化粧品ブランド;アスタリフトからアスタキサンチンを使ったサプリメントや化粧品などがいくつか出されている。

最近では養殖ものでも敢えてアスタキサンチンを多く含む餌を与える場合も多く、身の赤さが商品価値を決める場合も多いという。

 まとめ

マグロとサーモンの赤色の違いがご理解いただけただろうか?このように生き物の色や形の違いには必ずその生物の生態に基づいた論理的な理由が紐づいている。このような考え方を持って水族館や動物園で生き物を観察してみると一味違った観点で楽しめるかもしれない。

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