入館料3,000円でも赤字? 水族館を襲う『電気代高騰』の絶望的シミュレーションと生き残るための戦略

これまで、当ブログでは水族館に関する様々な記事を書いてきた。

例えば、日本の水族館では今ラッコは全国で一頭しかおらず、今後日本で見れなくなってしまう可能性が非常に高いという水族館の今後についての少し厳しい話などだ。
なぜ日本の水族館から ラッコがいなくなる のか?

これに加えて、現在、水族館は経営という観点からも変化を起こさなければ非常に厳しい状況だ。

特に「電気代」と「エサ代」という、水族館にとって削ることが不可能な「生命維持コスト」がダブルで高騰していることが、経営を激しく圧迫しており、入館料が「3,000円」でも足りないと言われている。

直近では、かごしま水族館や四国水族館などで実際に値上げが行われている。

今回は、水族館をビジネス視点で読み解き、なぜ今、入館料が「3,000円」でも足りないと言われるのか、その舞台裏を解説する。

24時間365日、止めることが許されない「LSS」の正体

水族館が、動物園や他のレジャー施設と決定的に違う点、それは「生命維持システム(LSS:Life Support System)」の存在だ。

水を常にきれいに保つろ過装置や熱帯魚にはヒーター、ペンギンやラッコには強力なチラー(冷却機)、更には数千トンの水を循環させるポンプが必要だ。

これらは、閉館後も、深夜も、1秒たりとも止めることができない。止まれば即、展示生物の死に直結するからだ。

一般家庭が「節電でエアコンを切る」ような選択肢は、水族館には存在しないのだ。

【独自試算】巨大水槽一つを維持するのに、いくらかかるか?

ここで、一般的な中規模水族館の「電気代」をシミュレーションしてみよう。

項目概算コスト(月額)

設備金額
巨大水槽の循環ポンプ約150万円〜250万円
大容量モーターを24時間フル稼働空調・水温管理(チラー)約200万円〜400万円
夏場の冷却、冬場の加温コスト照明・館内設備約100万円〜150万円
演出用ライト、ろ過システムの制御約500万円〜800万円

上記の試算だと、年間で約1億円近くに達する。

仮に月の電気代が600万円だとすると、電気代を払うためだけに、毎月2,000人の観客が必要だ。

ここから人件費、餌代、施設の修繕費を引くと、3,000円という入館料がいかに「ギリギリのライン」であるかが見えてくる。

「脱・展示」という生き残り戦略

このコスト増に対し、現代の水族館は「チケットを値上げする」以外の、より戦略的な変化を求められている。

今、現場で起きているのは「水族館の多機能化」だ。

「夜の水族館」でのBAR・イベント運営による昼間のファミリー層だけでなく、単価の高い大人向け市場を開拓しようとする動きが出てきている。

茨城県のアクアワールド大洗では、茨城県のさまざまなお酒を楽しめるイベント「宴夜~SAKEめぐりナイト~」を2026/3/7に開催する。

計4社の茨城県の酒蔵・醸造所が集まり、日本酒だけでなく梅酒やワイン、ビールも味わえるイベントだ。

試飲券4枚付の入場券は3100円。試飲券4枚とおつまみ5種のプレートが付いた入場券は3900円(100セット限定、2月27日までの販売)。

これはまさにこれまで水族館と縁がなかった「大人」を意識した企画だ。

他にもリゾートウエディングという形で沖縄県の美ら海水族館がウエディング事業に参画するなど、場所としての水族館をフル活用した企画が各地で起きている。

加えて、VR・デジタル展示の導入本物の水を大量に使わない展示を混ぜることで、LSSの負担を物理的に減らす方法などが取られ始めているのだ。

まとめ:私たちが「3,000円」を払うことの本当の意味

「最近、水族館のチケット高いな……」と感じるかもしれない。

しかし、その3,000円は単なる入場料ではなく、「絶滅の危機にあるかもしれない生き物たちの命を、24時間守り続けるための生命維持装置の維持費」そのものだ。

次に水族館へ行った際は、ぜひその美しい照明の裏にある「ポンプの音」に耳を澄ませてみてほしい。

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