【Google Chrome】サードパーティCookie廃止の撤回に伴う広告業界への影響について
Googleが、ChromeブラウザにおけるサードパーティCookieの廃止の撤回を発表した。
サードパーティCookieが使えなくなることによるWeb広告業界への影響は大きく、リターゲティング等のこれまで使っていたターゲティングが使えなくなる。
そもそもなぜ、サードパーティCookieは規制されているのだろうか?
理由はユーザー保護の観点だ。
サードパーティCookieは、ユーザーが訪問したことのないサイトのドメインからも発行される。
これにより、広告主や分析ツールなどの第三者が、ユーザーの知らないうちに情報を収集することが可能になる。
この特性が、プライバシーの観点から問題視され、サードパーティCookieの規制につながっている。
これまでのGoogleChromeのサードパーティCookie廃止の流れを下記にまとめた。
Table of Contents
Third Party Cookie廃止の歴史
2017年: Appleの動き
AppleがIntelligent Tracking Prevention (ITP) 1.0を導入し、Safariブラウザでサードパーティクッキーのトラッキングを24時間に制限。
2018年: ITPの強化
AppleがITP 2.0をリリースし、サードパーティクッキーの制限をさらに強化。
2019年: 段階的な規制強化
2月: ITP 2.1導入。ファーストパーティクッキーの有効期限を7日間に制限。
4月: ITP 2.2でファーストパーティクッキーの有効期限をさらに24時間に短縮。
9月: ITP 2.3でローカルストレージの有効期限を7日間に制限。
2020年: SafariとFirefoxの完全ブロック
3月: AppleがSafariでサードパーティクッキーを完全にブロック(ITPフル)。
MozillaのFirefoxもサードパーティクッキーのブロックを開始。
2020-2022年: Googleの動き
Googleが2022年までにChromeでサードパーティクッキーを廃止する計画を発表するも、延期を決定。
2023年: 延期の継続
Googleが2023年後半に予定していたサードパーティクッキー廃止を再度延期。
2024年: 段階的廃止の開始
1月4日: GoogleがChromeユーザーの約1%を対象にサードパーティクッキーの段階的廃止を開始。
4月23日: Googleが3度目の延期を発表。業界や規制当局からのフィードバックを調整する必要性を理由に挙げる。
2020年1月にサードパーティCookieの廃止計画を発表し、2024年末までに完了する予定だったが、ついに2024年7月サードパーティーCookieの廃止を撤回することとなった。
このように先行的にサードパーティクッキーの廃止を推進してきたAppleに対して、Google Chromeは遅れをとってきた。
Googleはビジネスの性質上、広告収入に大きく依存しているため、急激な変更は広告主やパートナー企業に混乱をもたらす可能性があったため、規制対応は慎重にならざるをえなかったのだ。
一方、Googleは完全にユーザー保護の試みを辞めるわけではなく、Cookieに代わる技術として「プライバシーサンドボックス」を開発しており、ユーザーのプライバシーを保護しながらサードパーティCookieの機能を代替することを目指している。
引き続き、プライバシーサンドボックスに関する取り組みは継続される見込みだ。
Googleでは、Chromeユーザーの一部に対してサードパーティCookieの利用を無効にするテストが行われていたが、この実績が芳しくなく今回の決断に至ったと推察される。
※テスト対象外のユーザーも、設定を変更することでサードパーティCookieの利用を無効にすることが可。
Third Party Cookie 廃止の取りやめによる広告主のメリットとデメリット
・メリット
①ターゲティング広告の精度維持
サードパーティCookieを用いることで、ユーザーの行動履歴に基づいた精度の高いターゲティング広告が引き続き可能。
➁リターゲティングの継続
過去に訪問したサイトや閲覧履歴に基づくリターゲティング広告が引き続き利用できるため、広告効果を維持できる。
➂広告効果測定の正確性
サードパーティCookieを利用することで、広告のクリック数やコンバージョン率などの効果測定が正確に行えるため、広告キャンペーンの最適化が可能
・デメリット
①プライバシー懸念の継続
サードパーティCookieの利用が続くことで、ユーザーのプライバシー保護に対する懸念が引き続き存在し、ユーザーの信頼を損なう可能性がある。
➁規制強化のリスク
法律やブラウザ側の規制が強化される可能性があり、将来的には再びサードパーティCookieの利用が制限されるリスクがある。
➂代替技術への依存
Googleの「プライバシーサンドボックス」などの代替技術の導入が進む中で、これらの新技術に適応するためのコストや労力が必要になる可能性がある。
サードパーティCookieの廃止の取りやめは、広告主にとって短期的にはメリットがありますが、長期的にはプライバシー保護の動向や規制強化に対応する必要があるため、注意が必要である。
Google ChromeのThird Party Cookie廃止が取りやめになった背景
業界からのフィードバック
GoogleはChromeでのサードパーティCookie廃止に向けて準備を進めていたが、広告業界や開発者からさまざまなフィードバックを受けていた。
これらのフィードバックを調整することに関連する課題が継続していたことが、廃止撤回の一因となった。
技術的な課題
Googleは「プライバシー・サンドボックス」と呼ばれるCookieに代わる新しい技術の開発を進めていましたが、その開発やテストに予想以上の時間がかかっていた。
プライバシー保護とユーザー体験のバランス
完全な廃止ではなく、ユーザーがプライバシーを管理できる機能をChromeに実装することで、プライバシー保護とユーザー体験のバランスを取ろうとしている。
競合他社との関係
Microsoft EdgeやApple Safariなど、他のブラウザベンダーとの競争も考慮に入れる必要があった。
Chromeユーザーの離反を防ぐためにも、急激な変更は避けたいという思惑があったと考えられる。
広告ビジネスへの影響
Googleの収益の大部分は広告から得ているため、サードパーティCookieの完全廃止は自社のビジネスモデルにも大きな影響を与える可能性があった。
規制当局からの圧力
プライバシー保護に関する規制当局からの要求に対応しつつ、広告業界の要望とのバランスを取る必要があった。
まとめ
サードパーティーCookieの廃止は撤回となったが、引き続き、ユーザー保護の取り組みは引き続き推進されると考えられる。
プライバシーサンドボックス等、Cookie代替技術の最新の情報は常に追っておきたい。